国語科田邉教諭の実践をご紹介します。

公開日: 2021年5月24日月曜日

 5月20日(木)に本校国語科の田邉友弥教諭に提案授業を行ってもらいました。


単元名や教材文は以下の通りです。

 

単元名:登場人物の相互関係や心情を捉え,『春花日記・勇太日記』を創ろう

教材文:なまえつけてよ(光村図書5年)

指導案:こちらをクリック(指導案のPDFファイルがダウンロードできます)

 今回中心となる言語活動は,『春花日記・勇太日記』で,席の隣同士がペアになり,2人で春花日記と勇太日記を3日分書いていくという活動です。3日分の日記を2人のうちどちらが『春花日記・勇太日記』のどちらを書くかはペアの話し合いで決めます。子どもたちはこの学習のはじめから終わりまで,単元を通して春花日記と勇太日記を作り上げる活動に没頭しながら,登場人物の相互関係や心情を捉えていきました。以下では授業での子どもたちの姿を中心に授業の様子をお伝えしていきます。

※ 子どもの名前は全て仮名です

 

1 ペアで深まる対話の姿

 私が観察していたペアの対話の様子です。3日目の勇太日記を書いていた「ゆうこ」の問いから対話が始まりました。※「たかし」は春花日記を書いています。


ゆうこ:勇太が紙で折った子馬を春花に渡したのは「気になったから」渡したのかな?「かわいそうだったから(春花が悲しかったから)渡したのかな?

たかし:そこが難しいよね。

ゆうこ:「明るい校庭」って書いてあるから,晴れ晴れした気持ちなんじゃない?←情景描写に注目

たかし:どっちもありえる。勇太は「ちらっと見た」ぐらいだから気になっただけかも。

ゆうこ:それだったら「名前何付けた?って言うのが・・・(腑に落ちない)。

たかし:あぁ,名前が気になっただけなら(3日目も)名前だけ聞くか。

ゆうこ:(折り紙の子馬に)「なまえつけてよ」ってことは春花が名前を付けられなかったことが悲しかったって分かってるってことじゃん。

 

2人の話を聞きながら,どんどん読みが深まる様子を感じました。「勇太がなぜ紙で折った子馬を渡したのか」という問いを解決するために情景描写に着目しただけでなく,春花の「悲しさ」の内実に迫りながら「勇太はただなんとなく春花のことが気になっているのではなく,春花が『名前を付けられなかった事』に悲しさを感じているから自分が子馬をつくることでその悲しさを和らげてあげたいと思っている」ということまでも読み取ったのです。もっというなら,題名の意図までつながる読みをすることができています。


このような姿は言語活動とテキストが絶妙にフィットしているから見られたものであると考えます。子どもたちが「活動を通して」しっかりと学んでいる事を見取ることができました。

 

2 言葉にこだわるこどもの姿

 同じペアを観察していると,ゆうこさんは徹底的に「言葉」にこだわっていました。ちなみに前時では春花の「かなしい」という言葉にこだわり,何回も辞書で意味と類義語を調べ,周辺の友達に相談してぴったりの言葉を探しており,結果的に春花は「へこんでいる」という言葉がぴったりだという結論に達していました。本時でも勇太の「はずかしい」という気持ちより「一歩手前」の言葉を探していました。詳細は省略しますが,今回も辞書でひきながら,友達と相談し,「はずかしくてサッカーをした」→「照れ隠しにサッカーで紛らわした」→「恥ずかしさを紛らわすためにサッカーをした」というように表現が変化していきました。これもまた,『日記』という言語活動が教材文とフィットしており,子どもが言語活動にのめり込んでいたが故に見られた姿であったと考えます。

 

3 問いを更新する姿

私が観察したペアの様子を書いてきましたが,一見するとゆうこさんだけが深く読み,活躍してるようにも見えます。私も「たかし君は聞き上手だなぁ」ぐらいに思っていました。しかし,振り返りを書く時間になって,突然堰を切ったようにたかし君が「紙の子馬を受け取ったときの春花の気持ち」について話し出しました。ゆうこに話す中で思考が整理され,たかし君は「春花の『勇太ってこんなところがあるんだ』の『こんなところ』が明らかにならないと自分が書いている春花日記は完成しない」というように,困りごとから新たな問いを生み出していました。

やはり「問い」は言語活動に取り組む中で生み出されるものであり,それこそが国語科におけるオーセンティックな学びにつながるのだろうと感じました。

 本校における今年度最初の研究授業でしたが,田邉先生の授業は「活動を通して学ぶ子どもの姿」をしっかりと示してくださり,年度のはじめに職員全員がその姿を共有することができました。非常に有意義な提案授業と授業研究会となりました。

 

ブログでは中々伝わらない部分が多く,詳細が分からなかったかと思います。もし本実践や本校の研究に興味のある方は,ご質問やご意見などを下記までお寄せ下さい。いつでもご連絡をお待ちしております。

 

熊本大学教育学部附属小学校

096-356-2492

 

国語科 田邉友弥教諭

ttanabe@educ.kumamoto-u.ac.jp

 

研究部長 大林将呉

shogo@educ.kumamoto-u.ac.jp

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