生活科坂口教諭の実践紹介!
公開日: 2021年8月19日木曜日
1学期に本校生活科の坂口静磨教諭に研究授業を行ってもらいました。
単元名は以下の通りです。
単元名:生きもの なかよし 大作せん 「くらべる昆虫図鑑」をつくろう!
~さぐろう!わたしのカイコのひみつ~
概要 :本実践は,一人一頭のカイコを飼育するのと同時に,自分で選んだ他の昆虫を飼育し,「比べる昆虫図鑑」という図鑑を作り上げていく活動を通して,虫や昆虫について詳しく調べるために観察したり,働きかけたりしながら,親しみや愛情をもって大切に育てようとする態度を育んでいきます。特に一人一頭のカイコについては,養蚕農家の方との交流を通して人の思いに触れることで,成長の様子や生命の尊さについての気付きの質が高まっていく姿を目指します。
指導案はこちらをクリックされてください。
1 子どもたちの主体的な姿
導入場面では,それぞれが前時から気になっていることを明らかにしようと個(もしくはグループ)でとても生き生きと話し合いながら活動していました。以下は,自分の蚕が繭にならないことが気になっている子どもとその子どもの困り感に寄り添う子どもたちとのやり取りの一部です。
C1:(図鑑を見ながら)熟蚕(繭になる前の状態になること)したら縮むって書いてあるよ。6cm5mmから5cm5mmぐらいに一回り縮むんだって。あと頭をふるってかいてあるよ。
C2:振ってる,振ってる。
C3:この子は何日も振ってるよ。
C4:とげとげしてくるっても書いてあるよ。これ熟蚕してるんじゃないかな。
C5:まぶし(蚕がまゆをつくるための部屋)から脱走することがあるって書いてあるよ。
上記のやり取りはほんの一部で,他にも蚕が繭にならない困り感に寄り添いながら,図鑑や自分の経験をもとにして追究する姿が豊富に見られました。子どもたちが蚕に愛情をもって向き合う姿勢がとても素晴らしいと感じました。また,ペアやグループにおける対話の深まりを改めて感じることができました。
2 課題設定と学習形態の工夫
個やグループでの解決の後,授業者がある子どもの困り感に寄り添ったうえで「どうして糸をはくのにまゆをつくらないの?」という課題を設定し,全体で解決していくことになりました。子どもの「まぶし(蚕がまゆをつくるための部屋)が関係あるんじゃないか」という発言から授業者は子どもたちが作ったまぶしの写真を比較できるように提示したことで,次のようなやり取りが生じました。
C6:長四角はダメだと思います。真四角ならいいと思います。
C7:まゆになった子どものまぶしは,長四角に作ってあるよ。
C8:まゆになってない方は長四角すぎだけど,まゆになっている方はまあまあ長四角になってる。
C9:まぶしの長さが25cmは長すぎると思う。
C10:養蚕農家さんが蚕よりもちょっと大きいぐらいがいいって言ってたよ。
C11:ダメな方は部屋を分けているけど,いい方は部屋を分けていないよ。
子どもたちは,まぶしに焦点化して蚕が繭にならない理由について話し合いを進めていきました。その中では,自分のまぶしと比べながら経験をもとに語っている姿や,養蚕農家さんとの交流の中で得られた知識を持ち出して解決につなげようとする姿が見られ,対話を通して気付きの質を高めていく様子が印象的でした。
3 「くらべる昆虫図鑑」を作るという活動の面白さ
この実践における活動は「くらべる昆虫図鑑」という図鑑を子どもたちがそれぞれ作り上げるというものでした。これは,蚕については全員が飼育し,その生態について詳しくまとめ,もう1種類虫を自分で選んで飼育し,そちらについてはそれぞれでまとめていくというものです。この図鑑作りの良い点として以下の3点を挙げることができます。
①蚕という共通の対象を設けることで,明確な基準をもって子どもたちの学びを見取ることができる。
②子どもたちが自ら追究対象を選択することができる。
③2つの生き物を比べることで子どもたちが見方・考え方を働かせることにつながる。
何でもありにしてしまうと,子どもたち一人一人が一体何を学んだのかを見取ることができなくなりがちです。いわゆる「活動あって学び無し」という状態です。蚕という共通の対象を設けることで坂口先生は子どもたちの学びの様子を見取り,指導に生かすことができていました。一方で,教師の押しつけによる学習は,子どもたちの自立的な学びの妨げにもなります。そこをもう1種類子どもたちに生き物を選択させる事によって,子どもたちの学びへの動機付けを高めることにつなげることができていました。さらに,これらを同時に追究させていくことで,自然と比較することにつながり,様々な見方・考え方を働かせ,それらを表現する場として図鑑作りを機能させているところにこの活動自体の面白さを感じました。
今回の坂口先生の授業で学んだことは,「課題設定の工夫」「ペアやグループでこそ深い対話が起こる」「子どもたちを本質的な学びへと誘う活動の重要性」の大きく分けて3つでした。1つ1つは今までもよく考えてきたことでしたが,「活動を通して学ぶ」という授業観に立ったとき,また新たな角度からこれらの在り方を問い直す必要があるなと考えさせられました。ブログでは中々伝わらない部分が多く,詳細が分からなかったかと思います。もし本実践や本校の研究に興味のある方は,ご質問やご意見などを下記までお寄せ下さい。いつでもご連絡をお待ちしております。
熊本大学教育学部附属小学校
096-356-2492
生活科 坂口静磨
shizumas1985@gmail.com
研究部長 大林将呉
shogo@educ.kumamoto-u.ac.jp
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